農林水産省の食品トレーサビリティ資料でも、食品の識別と、入荷した原料から製造への対応付けを段階的に扱っています。ここでは、実践的なマニュアル・製造加工業編の考え方を日常の入荷・保管・投入の整理へ使います。以下の表は運用検討用であり、全商品共通の法定記録項目を示すものではありません。

まず、たどりたい範囲を決める

一つの原料と、それを使う製品を選びます。入荷、保管、開封、移動、投入の順に現場の動きを紙へ書き、それぞれで残している記録を横に添えてください。どこで番号を書き写し、どこでラベルを付け替えるかも見ます。

担当者に聞かなければ分からない箇所は、その人が不在になると調査が止まります。開封した原料を別容器に移した際、元のラベルを捨ててしまっていませんか。移した後も、現物から元の記録を探せる表示を残します。

どこまで記録するかは、品目や取引先の要求、社内の管理手順によって変わります。細かく書くこと自体を目的にせず、後から特定したい原料や製造を先に決めましょう。

入荷時に、仕入先の情報と社内の識別をつなぐ

社内番号を付ける場合は、仕入先のロット番号と対にして記録します。仕入先の番号をそのまま使う場合も、仕入先名を一緒に残してください。別の会社から同じ番号の原料が届く可能性があるためです。

入荷時に、仕入先の情報と社内の識別をつなぐ:確認表
入荷記録の検討項目 記入例・記入欄
仕入先と原料名・規格 __
入荷日時 __
仕入先のロット表示 __
社内で識別する番号 __
数量と単位 __
納品書などの参照先 __
保管場所・状態 __

納品書の数量が分かっても、現物を特定できなければ照合できません。反対に、箱へ番号を貼るだけでも仕入先の資料へ戻れません。ラベルを見て納品書を探し、納品書を見て現物を探せるか、両方から確かめます。

分割・混合したときの関係を残す

入荷した原料を何回かに分けて使うときは、使用量と残量の両方を記録します。残った原料の番号と置場が分かるようにしておけば、翌日の担当者も続きを記録できます。

以下は架空の例です。原料ロットR001を100 kg入荷し、製造M101へ60 kg、M102へ30 kg投入し、10 kgを保管しているとします。M101の製造記録にR001の記載があり、原料側にもM101への投入がたどれれば、相互に確認できます。

分割・混合したときの関係を残す:確認表
投入日 原料ロット 製造番号 投入量 残量・所在 記録者
架空例:9月1日 R001 M101 60 kg 40 kg・冷蔵庫A 担当A
架空例:9月2日 R001 M102 30 kg 10 kg・冷蔵庫A 担当B
__ __ __ __ __ __

複数の原料ロットを一つの製造に使ったら、使ったロットをすべて記録します。代表の番号だけでは、別のロットから調べたときにその製造が見つかりません。工程に再使用や戻しがある場合も、元の原料と戻した先を社内手順に沿って記録します。

記録する時点と確認する人を決める

終業時に記憶を頼りにまとめて書くと、使ったロットを取り違えるおそれがあります。入荷時に番号を確認し、投入時に製造番号と使用量を残すなど、原料が動くタイミングで記録する方法を決めてください。

確認担当者は同じ情報をもう一度入力するのではなく、番号の対応、数量の単位、書き漏れを見ます。訂正する場合は、どこをなぜ変えたかが分かるように残しましょう。

保存場所、閲覧できる人、担当不在時の探し方も必要です。保存期間はこの記事の例で決めず、品目ごとの制度、取引条件、商品の流通や自社の管理方針を確認して定めます。

一件を逆向きにたどって、切れる箇所を直す

記録方法を決めたら、実際の製造を一件選んで試します。製造記録から使用原料と入荷資料を探し、次にその原料を使った他の製造がないかを調べてください。付けた番号を使って、必要な記録までたどれるかを確認する作業です。

見つからない関係があれば、必要な箇所だけ補います。新しい帳票を増やす前に、既存の製造日報へ原料ロット欄を追加するなど、現場で続けられる方法を選びましょう。使用するシステムについても、対応できる記録範囲と現場で残す情報を分けて確認します。

数量が合わないときは棚卸し差異の確認、単位の混在は在庫の単位と換算をご覧ください。

ケース内の異なる原料を区別し、使用記録へつなぐ流れ
図は記事の考え方を示す概念図です。HAIFFの画面や操作仕様を再現したものではありません。 図を拡大する

HAIFFでは、ケースの中にある原料まで区別して確認する

HAIFFの原料在庫画面では、入荷原料をケース別に確認できます。一つのケースに複数の原料が入っている場合も、中身を分けて表示します。それぞれの原料がどれだけ残っているかを確認できます。

また、生産ルールでは原料ロットの割り当て方を設定できます。在庫を確認することと、計画でどう原料を割り当てるかを決めることを、別の準備として扱えます。

本記事で記録を整える際は、ケースと中の原料を特定したうえで、**自社の製造番号や使用記録へどう対応付けるか**を確認してください。原料在庫の表示を出発点に、入荷資料から必要な製造記録まで一件ずつたどることで、足りない記録を見つけられます。

製造に使った原料ロットを記録・確認する際のチェックリスト