試作前に、目的、固定する条件、変える条件、評価項目、次に進む基準を決めます。誰が食べても同じ感想になることより、次の判断に必要な記録が残ることを目指します。

試作の目的を、決めたいことに置き換える

「もっとおいしくする」では、評価が担当者の好みに寄りやすくなります。「想定する調理方法で、身が崩れず食べやすいか」「包装を含む作業時間が想定原価に収まるか」のように、決めたいことを書きます。

初期の方向性確認、配合の比較、量産条件の確認、保存・流通条件の検証は、それぞれ目的が異なります。少量の厨房試作で味が決まっても、その結果だけで量産や保存の条件まで確定しないよう、段階を分けてください。

評価項目には、方法と担当を付ける

評価項目には、方法と担当を付ける:確認表
評価項目 記録の例 試作前に決めること
味・香り 強い、適度、弱いとその理由 比較品、提供温度、質問の言葉
食感・外観 崩れ、硬さ、色の変化 調理後の経過時間、撮影条件
歩留まり 投入量と得られた製品量 計量する時点、除外する量
作業性 工程別の時間、手直しの回数 作業者、設備、作業の範囲
包装・利用場面 開けやすさ、盛付け、残り方 実際の使い方に近い条件
品質・安全の検証 担当者が定める試験と記録 必要な検証、合否、判定者

官能評価の点数には説明を付けます。「3点」だけでは、味が薄いのか、想定用途に合わないのか分かりません。また、好みの評価と、満たす必要がある品質条件は分けて扱います。平均点が高くても、必須条件が未確認なら発売判断には進めません。

変える条件を絞ると、次の修正が見える

以下は架空の魚惣菜の試作例です。目的は、家庭で温めた後の食感を比べること。原料の規格、配合、重量、評価時点を固定し、形状だけを二種類に変えます。具体的な製造・加熱条件は品質担当が適切に設定したものを使う前提です。

変える条件を絞ると、次の修正が見える:確認表
試作ID 変えた条件 固定した条件 得たい判断
A01 小さめの形状 原料、配合、重量、評価方法 食べやすさの確認
A02 大きめの形状 A01と同じ 食感との両立を確認

仮にA01は食べやすいが崩れやすく、A02は形を保つが食べにくいと分かった場合、次は中間形状や別の改善条件を検討できます。配合や加熱方法まで同時に変えると、この判断が難しくなります。複数条件を扱う試験が必要な場合は、試験設計を担当者と事前に整理します。

採用・再試作・中止の条件を先に書く

試作後の会議では、好き嫌いの議論より「目的に対する結果」を先に確認します。採用は次段階へ進む条件を満たした状態、再試作は修正すべき仮説がある状態、中止・保留は設備や原価などの制約を解消できていない状態です。

数値基準を置けない項目でも、「想定する食べ方を説明なしで再現できる」など観察可能な基準にできます。数値を設定する場合は、顧客要求、社内規格、検証方法に合わせて決め、別商品の基準をそのまま借りないでください。

厚生労働省のHACCP資料を参照し、新商品で管理すべき危害や工程の変更がないか品質担当と確認します。試食で異常を感じなかったことは、安全性や保存期間の証明にはなりません。

記録を、次の担当者が再現できる形にする

試作IDに、日付、原料ロット、配合、工程条件、使用設備、計量結果、写真、評価コメントをひも付けます。写真だけでなく、撮影した時点も残します。原料や工程に変更があれば、旧版を上書きせず変更理由を記録してください。

AIは評価表の整理や、結果から次に確かめる仮説を出す補助に使えます。ただし、測定していない値をAIに補わせたり、AIの想定レビューを試食結果と混ぜたりしないことが必要です。試作会議の最後には、次回の目的、変える条件、担当、期限を一つずつ決めれば、作り直しが検証の積み重ねになります。

評価者の意見が割れたときは、平均して終えず、想定した利用者や食べ方と対応させます。家庭向けの少量利用を想定した商品なら、大人数向けの盛付けで得た感想とは条件が異なります。結果が悪かった試作も削除せず、試した条件と不採用の理由を残すことで、同じ修正を繰り返すのを防げます。

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