企画初期にすべてを確定する必要はありません。確認済みの商品事実と、これから確かめる仮説を分ければ、販売先から具体的な意見をもらいやすくなります。
「こだわり」を、買う理由へつなぐ
「地元の原料を使った」「職人が工夫した」は商品の事実や背景です。それだけで、買う人にとっての価値まで伝わるとは限りません。その特徴が、どの場面の困りごとにどう役立つかを考えます。
例えば、小容量という特徴なら、少人数で食べ切りたい場面との関係を検討できます。ただし、実際に食べ切りやすい量か、価格との釣り合いはどうかは顧客に確かめる仮説です。「小容量だから必ず売れる」と飛躍せず、事実と想定を分けて表現します。
一枚の企画書に、六つの項目を置く
| 項目 | 書く内容 | 避けたい曖昧さ |
|---|---|---|
| 対象者 | 誰が買い、誰が食べるか | すべての世代向け |
| 利用場面 | いつ、どこで、どう食べるか | いつでも便利 |
| 解決すること | 現在の不便や選びにくさ | おいしくて高品質 |
| 商品の特徴 | 容量、形状、調理方法、原料等 | 根拠のない優位性 |
| 販売条件 | 想定価格、流通温度、包装、供給量 | 条件を示さない売場提案 |
| 未確認事項 | 試作・顧客確認で確かめること | 仮説を確定情報として記載 |
保存方法や表示に関係する数値は、企画時の希望と検証済み仕様を明確に分けます。販売先に提出する段階でも、未確定の条件は「検証中」と表示してください。
架空例で、広い表現を具体化する
架空の冷凍魚惣菜を考えます。初期案が「地域の魚を使った、忙しい人に便利な商品」だけでは、営業担当も提案先を選びにくくなります。
これを「平日の夕食で、主菜を少量だけ追加したい一〜二人世帯に向けた冷凍魚惣菜。想定する家庭の調理方法で準備できる容量を検討する。既存の冷凍惣菜売場で、手に取りやすい価格帯を販売先に確認する」と具体化します。
この文章は完成した商品仕様や販売実績ではありません。容量、調理方法、価格の条件を販売先と試作で確かめるための仮案です。「忙しい人」という広い対象を、場面と量に置き換えたことで、次に何を調べるかが見えるようになります。
販売先には、利用者の価値と取扱条件を分けて説明する
消費者にとって魅力があっても、納品単位や売場の設備に合わなければ採用されにくくなります。企画書では、利用者が買う理由と、販売先が取り扱える条件を別欄にします。
営業が確認する項目は、想定売場、納品ロット、発注頻度、必要な残存期限、返品等の取引条件、説明に使う商品情報です。相手によって必要条件は変わるため、一般的な数字を一律に当てはめません。業務用なら、調理工程、提供量、現場での扱いやすさも確認します。
商品事実は、仕様と根拠をそろえて表現する
原料の産地、配合、容量、栄養や健康に関する表現などは、担当者が根拠を確かめます。消費者庁は食品表示に関する法令・通知を公開しています。また、実際より著しく優れていると誤認させる表示は景品表示法の問題になり得ます。具体的な表現は商品の条件と適用制度を踏まえて確認してください。
実務上は、企画書の各表現に「根拠となる仕様書」「確認担当」「使える媒体」を付けます。AIが作った「最高級」「誰でも安心」といった言葉を、根拠がないままコピーとして採用しないようにします。魅力は、確かめられた特徴と利用場面の組み合わせで伝えられます。
説明した後は、相手の判断理由を聞く
「どう思いますか」だけでなく、「どの売場なら扱えそうか」「今ある商品と何を比べるか」「採用判断に足りない情報は何か」を聞きます。好意的な感想が出ても、購入や採用が決まったと扱わず、価格や納品条件を含めて確かめます。
面談後は、事実として得た回答、こちらの解釈、次に試す修正を分けて記録してください。商品コンセプトは飾り文句を完成させる作業ではなく、販売・製造・顧客の条件を一つの案へそろえていく作業です。
短い説明文を作ったら、別の営業担当に読んでもらい、誰に何を提案する商品か言い直してもらいます。説明が大きく変わる箇所は、対象者や特徴がまだ曖昧な可能性があります。言葉を強める前に情報を補い、企画条件の表と説明文が矛盾しない状態に整えます。
出典・関連情報
- 消費者庁:食品表示法等
- 消費者庁:優良誤認とは(以上2026年9月6日確認)
- 食品の新商品開発を進める手順
- 手持ち原料から商品案を考える条件
- AIの商品案を実際の顧客に確かめる方法