中村海産とENOSTECHが開発するHAIFFは、こうした現場の調整を業務データと計画案へつなぎ、経営者が先の仕事を考えるための仕組みを目指しています。この記事は、公式製品案内と公表資料をもとに、開発の背景と、自社で利用を考える際の確認点を整理したものです。

出発点は、紙と人の頭に集まっていた判断

HAIFFの公式製品案内では、1921年創業の水産加工会社・中村海産の経営体験を開発の出発点として紹介しています。生産調整を引き継いだ際、情報は紙や人の頭にあり、原料、受注、在庫、人員、納期を確認しながら日々の計画を組み直していたと説明されています。

この説明から見えるのは、単に表を作る時間が長いという課題だけではありません。一つの条件が変わると、他の条件も確認し直さなければならないことです。注文が増えれば必要な原料が変わり、原料が足りなければ製造日や数量を見直す。人員の都合で能力が変われば、別の日の計画にも影響します。

その関係が記録されず、一人の経験だけに依存していると、別の担当者が数字を見ても同じ判断へたどり着けません。HAIFFの開発背景を自社へ当てはめる際は、「Excelを使っているか」より「条件が変わったとき、誰が何を考えて組み直しているか」に注目すると、課題を具体化できます。

現場の条件を、説明できる計画案へつなぐ

HAIFFの公式案内では、生産計画に商品在庫、出荷予定、原料在庫、歩留まり、工場能力、稼働日、独自ルールなどを使います。曜日ごとの製造条件や人員増減に応じた上限も、計画を考える材料として扱います。

重要なのは、AIが出すものを人が確認するための「計画案」と位置付けていることです。在庫が実態と合うか、予定どおりに原料を投入できるか、現場の能力に収まるかを担当者が確認して採用します。

これは、経験者の判断を何も残さずAIへ置き換える使い方とは異なります。経験者が普段確認している条件を整理し、計画案の前提へ取り込み、例外は人が確認する。その関係を明確にして使うことが、開発背景に沿った導入の考え方です。

新しい入力を増やす前に、今ある情報を活かす

公式製品案内では、既存のExcelや日報を活かし、日々の作業を進める仕組みとしてHAIFFを説明しています。現場で既に記録している原料や製造、出荷の情報を整理し、計画と実績の検討へ使う流れです。

導入する企業にとっては、現在の帳票を全部捨てることが最初の作業ではありません。どの数字を誰が記録し、どこへ転記し、誰の判断に使うかを確認することが先です。データの形式や更新方法、実際の連携範囲は、自社の業務に合わせて確認する必要があります。

例えば、同じ製造量を現場日報と事務所の表へ二度書いているなら、その意味が同じかを確かめ、一度確認した情報を使える流れを検討できます。一方、加工完了量と包装完了量は違う情報なので、単に欄をまとめるべきではありません。ここは導入前に整理できる部分です。

公表資料で確認できる共同開発の位置付け

NEDOのGENIAC-PRIZE 2025成果発表カタログには、有限会社中村海産と株式会社ENOSTECHによる、食品加工業向けの生産管理・経営分析AIエージェントHAIFFが掲載されています。食品製造の現場と技術開発を結び付ける取り組みとして、共同の名称を確認できます。

このような公表資料は開発主体と取り組みの内容を確認する材料ですが、各工場で同じ効果が出ることの保証ではありません。自社に合うかどうかは、扱う原料や商品、業務範囲、データの状態、運用担当者をもとに確かめる必要があります。

生産計画と商品開発を、現場データから考える

現在の製品案内は、生産計画に加えて商品開発も対象としています。商品開発では、企画条件、商品案、リサーチ、試作レシピ、想定顧客レビュー、原価・粗利の確認などを進める流れが紹介されています。

ただし、AI上の想定レビューは実際の顧客への調査ではありません。レシピや原価も試作・判断の材料であり、製造や販売の確定結果ではありません。実際の試作、品質や安全性、表示、顧客の反応を人が確認する前提です。

二つの用途に共通するのは、漠然とした指示だけで結論を出すのではなく、現場の条件を整理して判断材料を作ることです。まず必要性が強い一方の業務から確かめる進め方も選べます。

自社の困りごとを、一つの場面で整理する

HAIFFを検討するなら、次の表を一件分埋めてみてください。「属人化している」という言葉だけより、対象業務と必要な支援を具体的に相談できます。

自社の困りごとを、一つの場面で整理する:確認表
確認すること 自社の記入欄
計画を組み直した直近の場面 __
変更した条件 注文・原料・人員など:__
判断に使った資料 __
経験者だけが知っていた条件 __
他の担当者へ渡したい判断 __
最初に試す商品群・工程 __

開発背景を読むことの価値は、自社も同じ結果になると期待することだけではありません。調整のどこに時間がかかり、何を言語化すれば別の人も判断できるかを見つけることにあります。具体的な試行は一商品群からHAIFFを試す準備、判断の引継ぎは社長に集中する生産計画の見直しで整理できます。

出典・確認資料

公表内容をもとに2026年9月時点で整理しています。本記事のために新たな取材や効果測定を実施したものではありません。